突然ですが、イベント制作業ってどんな仕事だか分かりますか?このイベント業界に身をおいている人なら大体はご理解いただけると思いますが、制作業を生業にしていないと具体的にはイマイチ分かりづらいですよね。

そこで今回は、つい先日に自分がやった案件が守備範囲がやたらと広かったので、その業務を具体的につらつらと羅列してみたいと思います。それを見ればこれからイベント制作業をやろうと思っていた方も大体はイメージが湧くのではないかと思います。就職活動で業界研究をされている方はこれで制作業が担っている守備範囲が分かると思いますので、是非参考にしてみてください。
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制作の初期段階

・会場探し
クライアントからヒアリングしたスケジュール(複数日)の候補、条件(キャパや設備など)をもとに30会場ぐらいに会場に問い合わせ。

・会場説明資料作成
スケジュールの空いている会場の中から4会場に絞り込み、その会場がどんなところなのか、どんなポイントがあるのかなどの資料を作成。

・会場ロケハン
実際に仮押さえしている会場をクライアントともにロケハン。事前に入手している資料をもとにクライアントにポイントを説明。

・会場決定連絡&その他のバラし
決定の判断をもらい、決定となった会場に決定連絡。その他の会場へ丁重にバラし連絡。

・会場決定後の契約書やりとり
会場側から契約書を送付していただき、その書面を確認。問題がないことを確認し、書類を返送。

・開催日程決定に伴いチーム編成
会場決定により日程が確定したことで、ここでようやく各スタッフ陣に連絡。今回のイベントに合致するチームを選定し、それぞれへスケジュール確保の連絡。今回連絡したのが、舞台監督、施工、音響、照明、映像、配信、進行ディレクター、美術、通信環境、VJのメンバーに開催概要(日時会場)をメールで連絡。

・司会タレントさんへ出演依頼
簡単な概要をもとに司会役のタレント事務所さんに出演依頼を行いました。スケジュールが空いていたので、そのまま決定の連絡を行っています。

・会場へ見積り依頼
実施想定のスケジュールと内容で見積りを依頼。

・実施計画書作成
クライアントから見積りに影響しそうな要素をヒアリングし、実施内容をざっくりとまとめた実施計画書を作成。

・各社に見積りを依頼
実施計画書の内容をもとに各社に仮設定の見積りを依頼。こちらで把握しきれているところは依頼せず。

・概算見積り作成
仮見積りの情報をまとめて、自社の見積りを作成。初期段階の予算確保上重要な作業。この前の段階の仮設定の精度が低いといい加減な見積りになり、後で苦労することになります。また見積りをもらうほどでもないパートの概算設定が甘いとそこも苦しみます。逆に高すぎてもプラン全体の見直しになりかねない慎重に行うべき業務になります。

・見積りの説明&予算確保
見積りの内容や専門性の高い部分の意味をクライアントに解説し、必要な予算を確保します。


この辺までが初期段階と言えます。まずは全体のアウトライン、方向性を決める。そして必要な予算を確保することが重要です。この段階でディティールに寄りすぎると非常に効率の悪い制作のススメ方になってしまいます。


制作の中期段階

・今後の確認項目のリストアップ
どんなことを確認していったらよいかをひたすらリストアップしていきます。こちら側の作業というよりクライアントに依頼する要素をまずはまとめました。

・今後の作業&確認スケジュール作成
今度はその内容をもとにいつまでに確認したいかをまとめ、クライアントに送付。今後の作業のスケジュール感を共有します。こちらの提出のタイミングだったり、チェックバックのタイミングだったり、入稿のスケジュールだったり、お互いの事情やスケジュールをすり合わせます。今回は現場などでレスポンスが悪くなる時期が率直に相談できるできたので非常に助かりました。

・スケジュールに合わせた各社との打合せスケジュールを設定
関係者が多くなる打合せはなかなかスケジュールを合わせづらいので、早めに打合せを設定しました。技術スタッフのキックオフMTG、直前の進行ディレクターMTGはかなり早い段階から組みましたね。

・技術スタッフ会場ロケハン
現在の実施計画書の内容が無理がないか検証するべくスタッフとの会場ロケハンを行いました。ここではレイアウトプラン、電源計画、搬入出、オペ卓配置などについて検証しています。

・図面作成
ロケハン情報をもとに会場の図面を作成しました。各社の要望を満たしているか、できたものを各社に送りながら、何度も図面に赤入れを行い、提出できる状態までまとめていきます。

・実施内容ヒアリング
スケジュールが近づいてきたことで、クライアントのイメージされている情報をヒアリングしました。

・実施計画書のブラッシュアップ
こちらのロケハン情報の反映、またクライアント側の要望が具体化してきたので、それをもとに実施計画書をブラッシュアップしました。運営マニュアルや進行台本のもとになるような情報ですね。

・進行台本作成に着手
実施計画書をフィニッシュさせて、進行台本の作成に着手しました。まずはしゃべりコメントを中心とした進行台本を作成し、全体的な流れを確認します。

・運営マニュアル作成に着手しました。
スタッフの手配人数や会場の設定、運営方法のベースとなる考え方を整理しました。

・特殊な手配物の裏取り
今回は表彰物の製作を請け負いましたので、その入稿フォームを入手し、納期を確認し、クライアントにデザインを依頼しました。またLIVEがあるので、譜面台の手配や早替え用のフィッティングルームなどちょっと変わり種の備品の確保を行いました。

・技術打合せ
今回は機密事項を扱っていたこともあり、打合せの場にも気を使いました。弊社の会議スペースに空きがなかったので、外部の部屋を借りたのですが、個室を確保しています。人数が多いのでその確保や連絡調整もちょっとした一苦労でした。

図面がほぼまとまってきたところで、各社との技術打合せを組みます。こちらが考えている進行台本の内容、進行イメージ、素材の状況などを共有していきます。ロケハン以降はあまり詳しい情報を提供していないので、想像を具体的に、また各社の事情を調整していきます。今回は台本がある程度できていたので、カメラワークやきっかけ、リハーサルスケジュール、搬入出の順番についても触れています。

・第二段階の見積り提出
技術打合せを受けて、各社に再度見積りを依頼。その内容をもとにさらに精度の高い見積りを作成、提出しました。

・デザイン素材集め
クライアント側とこちら側の両方でデザインを進めるため、デザインに関する素材を依頼しました。どんな内容のものをどんな仕様でいつまでにお願いしたいと具体的にリクエストしています。頂いた内容も随時チェックし、素材が足りる足りないなども早めに連絡を入れています。

・キャスティング会社との打合せ
今回のイベントでは6名の出演者+1名のタレント+1組のアイドル、1組のアーティストとのやり取りを行うため、6名の出演者部分はキャスティング会社に入っていただきました。この段階のキャスティング会社さんへは現状の進行表やスケジュールなどをお送りし、当日の段取りの大まかなところをお伝えしています。

・アイドル事務所との打合せ
このアイドルさんがまだあまりイベント慣れしていないとのことで、念入りに会場環境や当日の進行段取りをお伝えしました。

・物販会社打合せ
今回のイベントでは物販も行うので、物販の計画についてもこちらでリードして打合せを行いました。販売数、納品計画、販売金額、告知方法、売り子手配、レジ対応などについてです。

中期段階以降は大きな方向性はもう変わらないので、細かい内容が増えてきます。この時点で手配しづらいものにちゃんと裏取りをしておかないと後々厄介なことになったりしますのでご注意を。ここの立ち回りは本当に経験の差が出ますね。


制作の後期段階

・進行台本更新
以降何度か台本は更新していますが、主にこんな順番で更新を行っています。
 コメント部分
 音響部分
 照明部分
 映像部分
 ステージの動きの略図
 それぞれへ向けたト書き
頭から全部一気に進めると途中修正が入った時に死ぬほど大変になってきますので、制作段階に応じて打合せで必要な段階で書き込みを増やしていきましょう。

・運営マニュアル更新
これも同じくですが、ページの枠だけでも一気に作ってしまう人もいるのですが、最初に必要のないページは無理に作らない方がいいと思います。後半は情報の更新管理、同期が非常難しく一つ直すと10個ぐらい直さないといけない箇所が出てきたりします。

・展示計画作成
やや後半にクライアントより展示の希望を具体的に伺いましたので、展示に関するスペースプランを作成しました。展示パネルの枚数、会場のベースになるパネルのサイズを検証して、簡単な資料化を行いました。

・展示パネル入稿
上記で確認した枚数、サイズをもとに展示パネルの制作を実施。こちらも入稿仕様を伝えて、デザインデータを依頼。そのデータを美術会社さんに送り、入稿の依頼を行っています。ちなみにこのパネル、少し特殊な仕様にしたいと思い、過去の実績をもとに写真で提案を行っています。

・オープニングアタック映像用音源依頼
今回はオープニングアタックを弊社で作りましたので、映像制作会社さんと一緒に考えて短いアタック映像を2本制作しました。その際の音を作曲家さんに依頼してます。作曲家さんに秒数やイメージを伝え、5種類の候補を作っていただきまして、その中から2つを選びました。

・オープニングアタック映像編集
作曲家さんに作ってもらった音源をもとに映像をづくりを行いました。映像さんにアタックで使える素材の提供、テキスト情報の提供を行っています。また短い時間ながらも構成を決めています。仕上げの色使いやエフェクトの使い方も細かく口を出させてもらいました。

・電気容量確認、配電計画作り
あまり本格的に詳しいわけではありませんが、各社の電源の取り方の計画をまとめました。音響さんはこの分電盤から、映像さんはこのコンセントから、運営用の雑電はここからなどです。今回は自分が無知なため皆さんにちょっとご迷惑をおかけしたかもしれません。ちゃんと勉強せねばと反省のポイントでもあります。「この分電盤ならカムロックで出せるので、12mmでC口に変換できるものを持ってきてもらえれば、アースがナシでいいのなら・・・」という話の間に入ったのですが、正直コレ制作会社レベルで分かる人ってどれぐらいいるのでしょうか・・・

・無料wifi手配
会場では無料wifiサービスを提供されたいとことで、通信環境を提供する会社さんにお手伝いいただき、回線の設定を行いました。どのエリアに何接続分などを決めて、発信機の配置などを決めています。またSSIDやパスワードもこちらで決めています。

・WEB媒体配信手配
今回のイベントはWEBで配信を行いましたので、その手配も行っています。配信を行う時間、配信の設備(卓や映像回線や電源)、配信への回線提供などを行いました。またイベントのスクリーンをそのまま出すと配信ではよく分からなくなることも多いので、配信用にカメラアウトを出してもらうなどの調整も行っています。ついでに配信向けにカメラワークの指示も行いました。

・音効素材準備
ほとんどの素材はクライアントより提供頂くものでしたが、音響側でそれを再生する時に再生しやすいように順番通りにCDに焼いて、音リスト(尺を書き込み)を用意しています。素材がそのままで使えない場合は、2曲をつないだり、最後の無音部分をカットしたりなど、若干の音編集も行いました。本番中のステージ、客入れ時のBGM、ロビー、配信時のBGMと4種類の音を選び、素材を用意しています。これが地味に手間だったりします。。

・PPT画面(静止画)作成
本番が約5時間ほどあるイベントだったのですが、その時に使われるPPT画面の一部をこちらでデザインして作成しました。そんなに凝ったデザインではありませんが、世界観を踏襲することだけは意識をしています。

・会場打合せ
会場さんに運営、進行計画の説明をする打合せを行いました。この段階で会場さん側に依頼する手配物の種類、数、設置場所、設置のタイミングの依頼を行っています。

・運営ディレクター打合せ
運営計画に基づき、ディレクターに事前に情報をオリエンしました。

・トランシーバー手配
運営プランに基づき、台数算出を行いトランシーバーの手配を行いました。台数、種類、到着日の指定行い、手配を行っています。

・スタッフパス作り
スタッフパスのデザインを確定させ、運営マニュアルに基づき、必要なスタッフ数を算出。必要数のパスを作成しました。社内の備品では数が足らないので、必要数に合わせて追加手配を行っています。今回は2種類のパスと2種類の腕章を用意しています。

・お弁当手配
お弁当の数を確認し、お弁当手配を行いました。今回は早朝からの現場だったので、朝、昼、夕食(軽食)の3種類の手配を行っています。昼は魚系、肉系で2種類から選べるようにしています。お弁当屋さん2社と搬入の段取り、支払い確認、ガラ回収の確認を行いました。

・現場台本作成&事務所へ現物送付
イベント性にもよりますが、まれに出演者さんに当日使ってもらう台本を製本して事前に送付することがあります。今回はまさにそのケース。台本の内容を確定させ、事前に現物を各社(6社)に送付しました。

・照明さんにLIVE演出の希望を連絡
LIVE中の音源を送るとともに、その曲のどのタイミングでどんな動きの照明を、どんな色の照明を、どのタイミングでミラーボールをなどを表にまとめ依頼しました。

・関係者に最終資料送付
実際には最終資料の前段階でも何度かお送りしていますが、関係各社(約20社)に資料を送付しました。

・控室表示
各控室用に誰が使うかの表示を作成しました。

・VJ素材収録&編集
VJで使う素材を映像会社さんに依頼し、編集を行いました。60分のLIVEの本番用を作ったのでそれもなかなかの手間だったように感じます。

・舞台監督、進行ディレクターとの打合せ
最終段階ではありますが、舞台監督、進行ディレクターに台本上に書ききれない細かい段取りやきっかけを伝えました。

・ダンス用バミリピッチ
アイドルのダンスのピッチ用に番号を振ったピッチのバミリを用意しました。

・サイリュームの手配
来場者用のノベルティとしてサイリュームの手配を行いました。今回600人分なので、色の配分や数の振り分け、納期、納品場所を指定して発注を行いました。

・現場誘導サイン作り
立入禁止や撮影禁止、最後尾や矢印看板を作成しました。サイズもその使用場所に合わせて細かく用意しています。

・備品準備
現場で使用するガムテープやら蓄光テープやらゴミ袋やら電源タップやらを用意しました。

・レンタカー手配
現場に事前に送付ができなかったので、レンタカーの手配を行いました。物量に応じたサイズの車両を選び、使用時間を決めて発注を行っています。


で、現場に入るわけですね。

後期では実際にまとめた情報をアウトプットしていく作業が中心となります。それ以外にも細かい準備などをチマチマと行っています。この時期は人手が必要になってきますので、お手伝いのスタッフさんがいてもらえると助かりますね。


制作業って結局どんな仕事?

制作のお仕事のイメージ湧きましたでしょうか?結局よく分からない?そうなんです。なんというか、「制作」と一言でまとめる以外では分かりづらいお仕事なんです。人に説明する時には結婚式の準備みらたいなことを色んなジャンルでする仕事と説明しています。するとなんとなく伝わったりするんですよね。

制作業はご覧の通り何をするにも専門の会社さんに依頼するだけなので、スペシャリストというよりジェネラリストにあたると思います。いなくても実施はできるがいてくれると便利な職業。マストではなくベター。そんなお仕事だったりします。それだけに情報管理、情報発信をする精度、タイミングは十分注意して取り扱うようにしたいですね。


制作業の説明はどうしても文字だらけになってしまいますね。今度は個別の項目ごとに分かりやすくまとめたいと思います。