皆さんはシンギュラリティという言葉はご存知ですか?シンギュラリティとは、人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念を指します。

最近はAI技術の発展がめざましく、いろいろな分野でニュースになっていますよね。それにより私たちの生活も便利になるのではと期待されています。

またその一方でAI化、アルゴリズム、ビックデータの解析によって人間の仕事が奪われるのではということも話題になっていますが、果たしてイベント業界は生き残ることができるのでしょうか?ちょっと考えてみたいと思います。
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AI技術発展の現在

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にわか知識しかないのでご容赦頂きつつご紹介させていただきますが、最近は随分便利になりましたよね。自動車の自動運転はわかりやすい例かもしれません。センサーが前の車との距離を検知し、アクセル調整、また危険を察知したら自動的にブレーキを踏んでくれます。

また企業への問い合わせ対応も昔であればオペレーターが対応していましたが、最近はチャットによる対応を導入するケースも増えてきていました。問い合わせ内容もキーワードを解析し、よくある質問の回答例から適切なものを選んで回答するといったサービスも登場しています。

ターゲティング広告などもよく見ますよね。登録されているターゲットの属性などを分析し、興味を持っているであろう方へサジェスチョン広告を自動的に掲載しています。

現在このような技術の実用化が行われ、各分野でロスの削減、人件費の削減がどんどん進んでいます。過去に産業革命、IT革命と並びAI技術の発展は次なる革命をもたらすのではとまで言われています。


イベント業界の技術革新

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自分もまだイベント業界に参入して、17年程度の若輩者ですが、この期間内でも周囲の環境はすごく変わりました。昔語りみたいになって恐縮ですが、資料作りやデータのやり取りは本当に大きく変わりましたね。当時は進行台本もPCではなくワープロソフト(一太郎)で作っている人もたくさんいました。マニュアルに図面を貼り付けるのも一苦労で、施工会社さんから図面の出力がバイク便で送られてきて、それをサイズに合うように縮小コピー。メールも当時はADSLとかで図面のデータは重すぎてメールで送れないんですよね。ストレージサービスとかもなかったので、フロッピーやMOディスクがよくバイク便で飛び交ってました。で、その図面の出力を切ってスプレーのりで出力したマニュアルに貼り付ける。そしてマスターの原本のマニュアルを作り、ダイヤル付きのスタンプでページ数を押していく。そんなことをやっていました。

今やデータはDropboxやBOXやGoogle Driveで同期、共有され、LINEやチャットワークなどで情報のやり取りを行い、打合せではみんなノートPCを開いてそのデータを見るというのがほぼ当たり前になりつつあります。

制作以外でももちろん技術革新が起きています。音響さんはデジタルの卓を使い、iPadのソフトで通信をしながら舞台上で卓の調整を行う。音素材もCDやMDではなくデータのまま送ってPCソフトで再生。照明さんもムービングのプランはPC上のソフトで打ち込み、そのデータを卓に転送。映像さんも学会発表のPPT素材は遠くにあるPC受付でデータを受取り、サーバーに入れてステージ側のオペレートPCでリモプレで再生、動画素材もHDD内蔵のビデオプレゼンターに取り込んで再生。素材数が多くなったらDVDなどを使うことも減った気がします。

会社によってはもちろん今までどおりのアナログ対応だったりもしますが、確実に技術革新の波が訪れている気がします。


今後なくなっていく仕事、増える仕事

深い知識や高い技術を必要としない定型的な仕事、具体的には販売員や事務員などは代替される可能性が高いと指摘されています。コンビニの無人化なんかもこの流れですよね。人間でないとできない複雑なものでない仕事はどんどん置き換わっていくと思われます。

逆に増える仕事はロボット自体を運用する仕事は確実に増えるでしょう。分析されたデータをプログラミングする仕事や、メンテナンス業はきっと増えていくでしょう。機会といえども100%置き換わるにはまだまだ時間がかかるはずです。



ではイベント業界は今後どうなっていくか?

本題のイベント業界はどうなんだろうか、ですが、結論から言いますとなくなりはしないが産業規模としては縮小するのではと予想しています。先程なくなっていく仕事の候補になった販売や事務業務はイベント業にもあります。具体的にはコンサート会場における物販、問い合わせ受付、飲食販売、チケットもぎりは簡略化が可能になるでしょう。


イベントでシステム化できること

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現時点でも金銭授受、決済システムはかなり進化しつつあります。それにともないBtoC形式のイベントはAI化が進みやすいのではと思われます。

例えばチケットは電子チケットを使えばスマホによる認証が可能で、それと連動したゲートを用意すればチケットもぎりは不要になります。また同じシステムを使えば物販の決済も当日現場で金銭授受は不要となります。当日オープンさせるスマホ用ECサイトで商品一覧から欲しい商品を購入し、決済を済ませる。その後、商品の受け取りのみ行う。現場のスタッフの人数は半分ぐらいでも対応できるかもしれません。飲食も決済は同様の対応が可能になると思われます。アンケート的に受け取り希望の日時を入力したら受取時の混雑もなくなるかもしれません。後日発送もありえますね。

またインフォメーション業務もスマホや会場のタッチパネル化でできることがドンドン増えるでしょう。会場でよくある問い合わせをデータ入力したバーチャルユーチューバー的なモニターを用意し、会話をしながら案内をしてくれることも。Siri的な活用を考えれば可能ですよね。「忘れ物をしちゃったんだけど」→「現在届いているものはこれです」と一覧を表示したり、「一番空いているトイレは?」→「今のトイレの混雑状況です」で地図にトイレ位置が点滅、待ち時間が表示されたりも。

驚異の進化 AIアナウンサー「荒木ゆい」

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※公式ページより
最近発表されたニュースは個人的にも衝撃的な記事でした。それはAIアナウンサーが実用化されたことです。特にこの「荒木ゆい」は過去にあった読み上げ機能のクオリティーを遥かに凌駕しています。こちらの動画をご覧ください。



どうですか?すごくないですか?ゆっくりのsofttalkに毛が生えたレベルだろうと思っていたらぶったまげました。自分も試しにトライアルをやってみまして、過去作った台本のカゲアナ部分を読ませてみましたが、十分イケる。感覚的には85点ぐらい。金額面との折り合いを考えたら、カゲアナ+セミナーの振りコメント程度の簡単なセミナーやコンサート系の注意事項案内ならこれでいいのではと思ってしまいました。かなり近い将来そうなるかもしれません。

運営マニュアルや進行台本のフォーマット化

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今は運営マニュアルや進行台本はこうでないといけないという全国共通のフォーマットは存在していませんが、これも近い将来ブラウザ上やアプリ上で見る資料に変わるかもしれません。見やすさもスマホに最適化され、各自必要なものをダウンロードするだけになったり。作成もアンケートフォームに情報を入れ込むだけで、自動生成される日も来るでしょう。制作会社の人間が汗水たらして作成するなんてことも時代遅れになるかも。

AI化が難しい領域

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業務がAI化することで作業効率、スペース効率が上がり、その分ひとつのイベントの中でたくさんのコンテンツ、たくさんのサービスが提供できるようになるでしょう。その結果、単体では解決できていた問題がイベント内で複雑化します。今度はそのAIを使いこなす側にノウハウが必要になると思われます。

イベントは8割はレギュラーケースでフォーマット化はできても、残りの2割はレアケースの集合体。コンプライアンスの遵守を考えるとその部分の対応はAI化が難しいと思われます。問題の複雑化とともにまたあらたなレアケースが生まれ、レアケースの対応がなくなることは永久に来ないでしょう。

またイベントはどこまで言っても対応すべきは人間相手です。事前に決め打ちの動きだけであればAI化も可能ですが、コストや効率度外視でこんなことしたいという人は結構な確率で存在します。オリジナリティーの高い企業の担当者はやはりフォーマットに当てはまらない考え方の場合が多いです。また特にイベントはその担当者の思い入れが色濃く反映されやすく、アナログ調整は絶対必要です。


まとめ

8割がAI化できると考えるとやはりレギュラーケースで構成されているルーティーンワーク系の仕事が減り、結果イベント産業全体としては残念ながら縮小化するのではないかと思います。

逆にその分、人が対応しなければいけないようなオーダーメイドスタイルのイベントの重要度が増していくでしょう。人間がわざわざ対応することはそれ自体が贅沢品になると思います。今後のことはあまり悲観しておらず、好意的に捉えています。むしろいつまでも古いやり方にとらわれず積極的に最新技術を取り入れ、クオリティーの高いイベントを提供できるように努力していければと思います。