進行の現場をしているとどうしても起こってしまう機材トラブル。怖いですよね。起こって欲しくないですよね。でも絶対いつかは起こるんです。それもなんの因果かなぜかまとまって。

機材トラブルが発生した時の初期対応は一番イベント屋としての力量が問われるポイントだと思います。さぁ、あなたならどうしますか?
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機材トラブルは様々な角度で起きます

イベント会場には様々な機材が使われています。機材トラブルとひとくくりに言いましたが、どのようなジャンルが考えられるか、ざっくりとまとめてみました。

音響、照明、映像、中継、特効、施工、会場設備、通信設備など

会場設備までは考える方はあまり多くないと思いますが、イベント全体で考えますと、インフラ部分も現場での対処範囲として考えなくてはいけません。技術側の対処はもっと多岐にわたると思いますが、今回は進行としての対応例をまとめたいと思います。それでは起こりうるケース別にご紹介します。

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機材トラブル 音響編

  • マイクの音が出ない
    →マイクのスイッチ確認
    →ミュートがかかっていないか、ゲインが上がっているか確認
    →WLの電波障害なら有線の予備マイクを使用
    →隣の出演者などが別のマイクでフォロー
    →全てのマイクが出ないのであれば中断

  • マイクが混線
    →そのマイクを止め、他の呼びマイクを使用

  • 音効(CD)が出ない
    →音待ちになっていたら、進めるように指示
    →照明と一緒になっていたら照明だけ対応
    →出囃子になっているなら出演者を出す
音響のトラブル、特にマイク関係のトラブルは進行がストップする可能性が高いと思われます。すぐに復旧できず、かつ予備機材で対処不能であれば、主催者判断のもと潔く一旦中断を行いましょう。


機材トラブル 照明編

  • 一部の照明が付かない
    →見えづらい程度であればそのまま続行の可能性が高いです。
    →進行に影響が出る照明の場合、一旦続行のあと、プログラムの合間などで主催者と相談の上、一旦バトンをおろして調整を行うことがあります。もちろん安全が確保でき、舞台上または客席に影響がないのであればです。ただし、PRイベントなどでプレスに対して良い素材が提供できないようなケースは、先にプログラムを止めてでも調整する場合もあります。

  • 全部の照明が付かない
    →屋内のイベントで完全に暗転になってしまうのであれば必然的に中断になると思います。MCのコメントを差し込んで調整の時間を設けましょう。電源トラブルなどで復旧ができないのであれば中止の可能性が高くなります。主催者と相談の上での判断を行って下さい。
    →屋外の日中で照明の効果が強くないのであれば、続行の可能性が高くなります。

  • 照明機材の落下
    →照明機材はバトンに吊っていることが多いので、基本的には中断で安全確認を行って下さい。そして中断している間はバトンを降ろし再発防止の確認を行いましょう。難しいと思いますが、その上で再開するか中止にするかの判断を主催者と行って下さい。
音響と違って照明は演出的な側面が強いので、経験上は暗転にならない限りは続行になることが多い気がします。こんなことを言うと照明さんに怒られてしまうかもしれませんが、演出的な照明は若干機材のトラブルで予定と違っても目利きができる人が少なく、来場者や主催者には気づかれないことも多い気もします。(照明さん、一生懸命作っていただいているのにすみません)


機材トラブル 映像編

  • 映像の素材(ムービー)が映らない
    →そのまま流さず続行するケースが多いと思います。重要度が高いと復旧してからあらためて上映することもあります。
    →上映の途中でトラブルがおきた場合は、復旧後、再度上映することもあります。このあたりは重要度によりますね。
    →オープニング映像などの場合は、重要度が高く、その中で前提が語られないと意味がないこともありますので、無理にスタートせず、ちゃんと上映できるまで復旧を待ってからスタートすることが多い気がします。
    →上映会のような映像を見ることが主体のイベントの場合は中断、復旧しなければ残念ながら中止が考えられます。大きな判断なので主催判断を行う必要があります。
    →本番中に対処できるか分かりませんが、原因が特定され、その機材の代替機があり、セッティングの時間が確保できれば機材を差し替えましょう。

  • 映像の音が出ない
    →これ二度経験があります。まずはミュート、ゲイン上げを疑って下さい。その際、映像の音の調整は音響さんではなく映像さん側で小さなミキサーを持ち込んで調整を行っていることも多いので、まずは映像さんに確認しましょう。次に音響さんに確認して下さい。本当にミュート、ゲインが原因であれば途中から上げて対処する場合もありますし、映像にコメントついていて音なしでは意味がない場合、かっこ悪いのですが出し直すこともあります。

  • 発表のPCが途中で止まる
    →経験上一度ありました。壁のコンセントが壊れていて、ちゃんと給電されておらず、本番中にブチッと。ステージに駆け寄り、もしかして電源トラブルかもと思い、近くの別の電源口から電気をとることですぐに対処できましたが、近くに生きている電源がなかったらと思うとゾッとします。
    →PC自体のトラブルの場合は予備があれば予備のPCに差し替えましょう。その際バックアップデータをあらかじめ入れておくことをおすすめします。

  • 生カメの映像が出ない
    →生カメの映像は来場者に出演者の様子を大きく見せるための機材ですが、個人的には生カメはサービス的な側面が強いと思っています。ですので、トラブルが起きても続行の可能性が高いと思います。ただし、500人以上の会場や手元の技などを見せるイベントの場合は、生カメの重要度がぐんと上がりますので、主催者の判断次第で復旧するまで一時中断ということもありえます。

  • プロジェクターが出ない(ランプ切れなど)
    →中断、もしくは中止が考えられます。予備機を持ってきてセッティングし直しを待つしかありません。予備機がなく映像主体のイベントの場合は中止も視野に入れましょう。
    →期待するのは厚かましいのですが、だいたいの映像さんはプロジェクターの予備機を持ってきてくれています。あらかじめダブルスタックにしてもらうことも相談しましょう。
こちらも予備機の準備が肝になります。

経験上ですが、映像関係は接続設定が非常に複雑なので、持ち込み物が一部混ざるだけで、機材の相性的にトラブル率が格段に上がります。トラブルを前提とした心構えを行っておきましょう。

ちなみに携帯端末の映像を上映するイベントの際、直前まで大丈夫だったのに、一瞬スリープに入った瞬間に設定が変わりダメになったケースもあります。最新機材が続々と登場しているので組み合わせの実験を常に身を持ってやっているような感覚さえあります。


機材トラブル 施工編

  • パネルが倒れてきた
    →基本的には中断でまずは安全確保を考えましょう。出演者、スタッフ、来場者に怪我がないか確認して下さい。その上で再発するような箇所がないか確認しましょう。難しいと思いますが、その上で再開するか中止にするかの判断を主催者と協議を行って下さい。

  • 振り落としの幕が落ちない
    →幕が落ちなければ次の出演者、次のセットが現れないので進行が止まらざるを得ないです。

  • ステージの床が抜けた
    →こちらも同じく中断の上、安全確認ですね。
舞台関係の機材や資材は大きく、トラブルが起こると一気に危険度が上がります。見た目で大丈夫だろうと安易な判断をせず、一旦中断をはさみ、安全確保を第一に行って頂くことをおすすめします。


機材トラブル 特効編

  • スモークが出ない
    →演出的な側面が強いと思いますので、続行の可能性が高いですね。

  • キャノン砲やCo2、炎が出ない
    →そのタイミングを過ぎたら意味がないことが多いです。同じく続行の可能性が多いですね。

  • キャノン砲やCo2、炎が暴発
    →安全が確保されない状態であれば問答無用で中断ですね。

  • レーザーが出ない
    →演出的な側面が強いと思いますので、続行の可能性が高いですね。
特効も演出的な側面が強いので、経験上は続行になることが多い気がします。中断するような場合はやはり安全面かと思います。


機材トラブル 会場設備編

  • せりステージが動かない
    →安全装置に引っかかって止まることはあり得ます。これが動かなければ中断せざるを得ないですね。登場、退場できません。どうにも復旧しない場合は袖から出ハケすることも検討しましょう(ものすごくかっこ悪いですが・・・)。転換で機材を出す場合は止まってしまうと無理ですね。ライザーでは上下移動はできません。。

  • 電動スクリーンが動かない
    →映像の重要度によりますが、映像が重要な場合は必然的に中断ですね。

  • 緞帳が動かない
    →締める時に止まるのであれば、臨時で照明さんに転換明かりを作ってもらい、そのまま転換を行いましょう。開かない場合は、幕が開かなければ文字通りイベントはスタートできません。中断です。幕の中からMCコメントでフォローして頂くほかありません。
会場設備の場合はイベントの根幹になっているような機材が多いので、中断にならざるを得ないケースが多いですね。会場から借りている機材の不具合もあり得ますが、他の音響照明映像のように対応する他ありません。


機材トラブル対処の一番のポイント

現場は常に動いています。事故対応は早ければ早いほど良いのは間違いないことですが、やはりいざ起こるとギョッとします。

それぞれのケースについてあらかじめ対処方法をシミュレーションしておくことが初期対応の早さに繋がると思います。


技術側スタッフができる初期対応
  1. 代替え対処
  2. 復旧対応
  3. 発注元への説明
の順番で対応をお願いできればと思います。過去に数度そのようなことがありましたが、二次被害を出さないように決してパニックにならないように落ち着いて対処して欲しいと思っています。

特に「3」は少し落ち着いてからでもいいので必ずお願いしたいです。過去にはかなり邪険にされた経験も。。。殺気立っているタイミングなのは理解できますが、こちらもこちらの立場でやらないといけないことが起こっているので、落ち着いた時にできるだけ詳しい説明をお願いします。


進行側スタッフがすべき初期対応

まずは技術スタッフをやいのやいのとその時に責め立てないようにして下さい。感情的になると元も子もありません。できることもできなくなってしまいます。

技術スタッフもプロです。今の状態が正常じゃないことは明白なので言われるまでもありません。技術スタッフのパニックを助長するようなことは決して行ってはいけません。まずは技術スタッフを信じて見守りましょう。

本番中のトラブルの場合、まずは場の状況を来場者に説明する責任が発生します。MCに指示を迅速に出せるように、カンペの準備やメモの準備など最速で対処できるように準備を行って下さい。

そして制作にあたる方は急な変更判断に備えて、クライアントのもとに駆け寄って下さい。クライアントに状況説明を行い不安を取り除き、できる限りクライアントの意見を尊重する自己処理を行いましょう。


事後の対処

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まずは謝るしかないですね。発注元にごめんなさいです。

そして、トラブルが起きた機材費部分は請求として成立していませんので、値引きの対象になることは覚悟しましょう。制作会社としてまったく進行に支障のない範囲でも起こってしまったら値引きの覚悟はしましょう。またそれを提供されている技術チームの会社さんも申し訳ないんですが、ここは値引きを受け入れて下さい(不当な値引きをされているケースは例外ですが)。

イベントのトラブルがおきた時点でイベントとしての機会損失のようなことは起きています。二次被害によるさらなる値引きが発生しないようにトラブルは最小限に留めましょう。その場でできる限りの原因特定を行い、再発防止に努めましょう


主催者への事前のリスク説明

制作としては、医療業界で言うところのインフォームドコンセント(事前説明)も重要です。普段慣れていないことを行う場合はクライアントに「このようなリスクがある手法です」という説明は必ず行いましょう。これを行わずしてトラブルが起きると印象がまるで違います。


メンテナンスの重要性

言われるまでもなく当然のことではありますが、「備えよ常に」の精神でメンテナンスを行いましょう。機材トラブル自体は致し方ないとしても、メンテナンスと機材の状態確認は人間ができることです。これを怠ってはヒューマンエラーと言われておかしくありません。事故防止のためにできる限りを尽くしましょう。

自分にとっても耳の痛いお話ではあるのですが、むやみに予算を削減すると機材のメンテナンスが後回しにされてしまうこともあります。発注側もその点は十分留意して予算を確保しましょう。
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まとめ

機材トラブルは確率としてどうしても起こってしまうことです。起こることを前提に、常に「機材トラブルが起きたらどうする?」を頭の片隅に置いて、気を緩めず現場に向かいましょう。

そして起きてしまったら、もうそれは仕方がないことなので、できるだけ落ち着いて二次被害の防止に努めましょう。