さぁ「スタッフパスの用意の仕方」の最終章です。

一番肝心なポイントですが、スタッフパスをどのように使うべきかについてまとめたいと思います。
パス自体の管理がセキュリティーの要になることを十分理解してパスの取り扱いを行いましょう!

過去の記事はこちら
【運営】スタッフパスの用意の仕方① -パスの種類と特徴編-
【運営】スタッフパスの用意の仕方② -パスを作る配る編-
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スタッフパス管理はセキュリティーの要

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スタッフパスで行うセキュリティー管理とは前の記事でもスタッフパスは「セキュリティー管理のため」ということを書きましたが、もう少し掘り下げて考えたいと思います。

イベント会場では顔も見たことがない方がたくさん出入りしますよね。
一番顔が広い立場であるはずの制作担当でも、「こいつ誰やねん」ということが多々あります。
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そういう時はスタッフパスを着用してもらうと、まずは「スタッフだ」ということが分かります。
そう一番のポイントは「識別する」こと
スタッフパス自体がセキュリティーを守るわけではなく、パスを着用している人は部外者ではない関係者ということの証明になるのです。

部外者と分かれば、警備員さんやスタッフで毅然とした態度で対処することができます。
逆にそこが曖昧だと、パッと判断ができず初動が遅れ、大きな問題になってしまうことすらあります。

ですので、パス自体の管理がセキュリティーを管理することにつながるのです。


甘いセキュリティー管理が招くトラブル

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セキュリティー管理が甘いと、会場内に得体の知れない人が入り込み、このようなことが起こる可能性が高まります。
  • 盗難
  • 機密情報漏洩
  • 盗撮
  • 破損
  • テロ行為
大問題ですよね。
会場を管理する立場としては絶対に起こって欲しくないトラブルです。

物販のイベントをやっていて売上が盗まれたらどうしますか?
スタッフの私物が盗難に合うというケースは実際に何度か経験しています。
記者発表イベントでまだ発表前の情報がリークされたら?
コンパニオンの着替えが盗撮されたというケースが実際にニュースになったこともあります。
タレントさんのファンが控室に侵入!?
貴重な一点物の展示品がいたずらで破損された場合イベントが続けられなくなるかもしれません。
政治家などの要人が狙われたりしたら?


などのケースは実際に十分起こりうるリスクとして考えなければいけません。

警備員さんを入れれば良いのでは?と思われる方もいるかも知れませんが、警備員さんもこれが関係者なのか部外者なのかを見分けられないと、行動を止めることすらできません。
セキュリティーは起こってからの対処よりも未然に防ぐ方がはるかに簡単でコストも安くなります

そこでスタッフパスによる事前の「識別」がとっても重要になるのです。


パスの発行方法

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ではパスはどのような形で発行されるべきでしょうか?

厳密に言えば、きちんと身分証を提示して、入場許可を判断する必要があります。
実際に万博のお仕事をさせて頂いた際は、所属、名前、顔写真、生年月日を提出しました。
セキュリティー管理の最高峰の対応としてはこれに金属探知機が加わればほぼパーフェクトです。

ですが、実際はそこまでの対応をするのは難しいですよね。
そこでイベントのセキュリティレベルを設定し、それに応じた段階別の対応を行います。


セキュリティーレベル
  1. パスなし
    みんな顔見知り、盗まれるものもなければ壊れるようなものもない。
    楽はありますができればこれは避けた方がいいですね。
    お店でも店員さんとお客さんの見分けがつかないと恥ずかしいことになるので、同じ様にイベントでもせめてスタッフとお客さんぐらいは分けたいものです。

  2. 出入りしたいという人にスタッフパスを欲しいだけ配る
    通常のイベントだと不審者が入ることもほぼないので、このレベルで行うことが最も多いです。
    現場に入る関係会社の方を信頼して、必要な分だけ用意します。
    配り方が適当だとはっきり言ってセキュリティーとしての機能はあまりありません。

  3. 事前にスタッフリスト提出
    イベントだとお願いしている会社から下請け、孫請けまで色んな会社が出入りします。
    受けている会社もどこの仕事だか分かっていないケースもあります。
    そのためその方がどの会社の誰なのか、キチンとリストを提出頂き、必要数パスを発行します。
    場合によっては必要以上の申請を行ってきた方は入場を認めない場合もあります。
    有料イベントではこのパターンが多く、無料で侵入する輩を防ぎます。
    たまに会場でも入館リストを求められる場合もありますね。
    これも本末転倒なんですが、身分証の提示を合わせて行っているわけではないので、偽名を使われたら正直わかりません。
    残念ながら抜け道はたくさんあります。
    紳士協定でお互いを信じるしかないですね。

  4. パスに通し番号
    経験上あまりやったことはありませんが、パス自体に番号をつけて配布時、回収時にリストチェックを行うことも有効だと思います。
    セキュリティーと引き換えに検討すべき手法かと思いますが、パスに通し番号をつけるのは。。なかなかの手間ですね。

  5. 事前に身分証提出
    過去の経験だと万博のお仕事や国際系、政治系、皇室系のイベントの時に行っています。
    通常のイベントでここまで行うことは稀ですね。

制作会社によっては同じデザイン、形状のパスを使い回しているので、複製には十分注意が必要です。
似ているパスを身につけて関係者ぶって堂々と入られると簡単に侵入されてしまいます。
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ホテルの現場で結婚式に紛れ込んでタダ飯を食べる常連のツワモノもいるそうなので注意しましょう。
以前記事で書いたパスのデザインをこだわるというのは、複製防止の効果もあるということですね。

パスを発行する際は相手を信頼する部分が多いとは思いますが、発行は慎重に行いましょう


スタッフパスは絶対になくさない

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「スタッフパス失くしちゃったのでもう1枚頂戴」という人がいますが、これは非常に困ります。
1枚失くした=1枚拾った部外者が1人会場に入ることができる、ということになります。

セキュリティー管理上はこれは非常に危険です。
絶対になくさないように注意しましょう。
※自分も何度かあるので自分にも言い聞かせます。すみません。。

また現場で突発的にパスが必要になった時用に予備を用意されると思いますが、これも無造作に机の上などに置いておかないようにしましょう。
セキュリティーレベルが高いイベントですと、これも勝手に持っていってしまう輩がいますので、必ず目の届かないところにしまうか、人で管理を行いましょう。


パスの文字表記

スタッフパスから話が広がりますが、スタッフ以外の表記の区分も難しいですね。
これもいろいろなパターンがありますが、パターン別で解説したいと思います。

①スタッフパス
関係者のみなので、スタッフかお客さんかのいずれかの1区分。

①スタッフパス ②主催者
企業イベントではよく見る2区分のパターンです。要はあまり事情のよく分っていないアルバイトスタッフさんが主催者に気軽に問い合わせをしないように工夫した結果です。

①スタッフパス ②主催者 ③プレス
イベント会場にプレスが入る場合の3区分の識別です。記者発表や取材対象の方が来る場合の区分です。

①スタッフパス ②主催者 ③プレス ④記録(腕章やビブス)
先程のプレスのパターンに加えて記録カメラマン用の腕章が加わった4区分。プレス(外部)と記録(内部)で対応が異なるので識別しています。

①スタッフパス ②主催者 ③プレス ④記録(腕章やビブス) ⑤通訳(腕章やパス)
私は英語で案内ができます、ということを外国人参加者に伝えるための識別で5区分。国際イベントにはよくある区分ですね。

①スタッフパス ②主催者 ③プレス ④記録(腕章) ⑤出演者
いろいろ分けはじめると着用者がしっくりこないケースが出てきます。この場合は出演者や演奏者が「俺スタッフなの?」と違和感が出ないための識別です。控室管理のスタッフも他のスタッフとは違ってタレント側だよということで異なった対応が求められるので、そのための識別でもあります。


さあ、こうなってくると識別したい分、ドンドン増えていきます。

 事務局 VIP 関係者 ベンダー 説明員 警備・・・
 
キリがないですね。

このようにパスを分けることを識別計画といいます。
3区分以上は識別計画と言ってもいいでしょう。
マニュアルに必ず記載しましょう。

区分のポイントはオペレーションが変わるごとに分けるということです。

来場者とスタッフでオペレーションの違いがあれば分けましょう。
それは例えば入れるエリア、入れないエリアがあるというオペレーションの違いがあるはずです。
主催者とスタッフをは扱われ方が違うの場合は分けましょう。
例えば商品説明を行うのは主催者しかできないのであれば、分けた方が来場者にも分かりやすいです。
通訳やカメラマンのケースはまさにオペレーションが違いますよね。


スタッフパスの運用と識別の細分化の弊害

実際に識別計画を運用する際、管理を行うのは警備員さんやスタッフになることが多いのですが、識別計画が複雑すぎると何をすべきかちゃんと伝わらずオペレーションが破綻するケースもあります。
実際の管理を行うスタッフが理解できなければセキュリティー計画は失敗です。
色分けや表記を工夫して、分かりやすい識別計画を行いましょう。

セキュリティー的なことを考えると識別はした方がいいと確かに書きましたが、分け過ぎたら分けすぎたでパッと見て分からないという問題も起きます。
過去に自分も細かく分けすぎて便宜上どうにもならなかったケースがあります。

大規模なイベントではどうしても区分が増えてしまいますが、制作側では安易に無駄なパスを増やさないように注意して識別計画を考えましょう。



以上全3回に分けてスタッフパスから識別計画全般に広げて説明させて頂きましたが、どんなことを考えてパスを用意すべきか伝わりましたでしょうか。

識別計画は簡単なようで難しいポイントがたくさんあります。
パスには目に見えない部分でセキュリティーを高めたり、連携をスムーズにしてくれる機能があります。
新人さんが実際にパスを作ることが多いと思いますが、非常に重要な業務ということを認識して作成してもらえると嬉しいなと思います。


過去のパス関連の記事はこちら
【運営】スタッフパスの用意の仕方① -パスの種類と特徴編-
【運営】スタッフパスの用意の仕方② -パスを作る配る編-