上手を「じょうず」と読んでしまった人、下手を「へた」と読んでしまった人。この記事を読む価値が十分あります。今回は初心者向けです。

最近イベント業界の新人さんとお話した際にこのテーマを知りたい、とリクエストを受けたのでこの記事を書きたいと思います。進行に関する内容は初めてですね。
butai_stage_small

どっちが上手?どっちが下手?

舞台では、
ステージに向かって右側のことを「上手(かみて)」
ステージに向かって左側のことを「下手(しもて)」
と言います。舞台図

ちなみに座敷の座席の場合でも上座、下座ってありますよね。座席の場合は奥側で入口が見渡せる席が上座、入口に近く背を向けている側が下座と言いますが、舞台はまた違った考え方なんです。



なぜこの言葉を使わないといけないのか?
komatta_man2
まさにイベント業界の専門用語地獄。右側、左側でいいじゃないか、という声も聞こえて来そうですが、それがちょっと違うんです。専門用語を使ったほうが早いし便利なんです。

それは「ステージに向かって」という言葉がポイントです。舞台というものは客席側から見るか、舞台側から見るかで位置が反転してしまいます。なので、右左ではなく、東西南北のような、自分がどこにいても位置を伝える絶対的な位置の指標を決めました。

それが、「上手」、「下手」。

イベント業界の方と話す時は上下(かみしも)で伝わるのですが、そうでない時はステージに向かって左側、右側で言ってあげた方が親切です。どの専門用語にも言えることですが、意味もなく難解にせず、相手の認識度合わせて伝わるような言葉で表現しましょう

イベント業界に関わっている人はよく出てくるワードなので、とっさに「上手に来て!」と言われた時に迷わないためにも言葉としてはよく覚えておきましょう。

それと現場に入ると分かることですが、上の図を見て頂けると分かるのですが、上手と下手を行き来するためには舞台を横切るか、客席を横切るしかありません。

本番中舞台を横切るのはタブー行為の一つです。

上下を間違ってしまうと致命的なミスになってしまいます。会場によってはステージの裏側に通路を設けている場合もあるのですが、行き来には時間がかかりますので舞台進行にはその時間が命取りになります。



上手と下手の使い分け

さて、上手と下手はどう使い分けるべきなんでしょうか?日本における舞台にはいろいろなルールがあります。それに基づいてある程度はなにがどっちということが決まっています。

最初にざっくりと言いますと

上手側は「その場における来賓(ゲスト)」
下手側は「
その場における主催(ホスト)」

というルールが存在します。そもそも言葉からして「上」なので立てられる側の人。「下」なので自分がへりくだって相手を立てる側の人。と考えると分かりやすいですよね。

次からは実際のケースにあてはめてご紹介したいと思います。


下手側にはなにが来るべき?

「主催」にあたる下手側から具体的に何が出てくるのでしょうか?箇条書きでまとめてみました。

・式典などの主催者挨拶の登壇者
・表彰式の贈呈者
・表彰物
・表彰物を贈呈者に渡すアテンドスタッフ
・司会(MC)
・パネルディスカッションのコーディネーター


主催者挨拶などはあまり気にすることなく自然とそうなっていることが多いですよね。

表彰については下手側の表彰式の主催者から上手側の受賞者に渡すことが原則となります。

hyousyoushiki_man

ほら、いらすと見ても下手から上手でしょ?

ですが、公式に認められているイレギュラーケースがあります。

それは「卒業式の卒業証書授与」

中央にいる校長が中央で正面を向き、授与される側が出席者にお尻を向けて受け取る。あれはなんでなんですかね?本来の舞台の考え方としては不適切な気もします。学校が学びの場で卒業証書を受け取るとは言っても教師と生徒という関係性なので、とかでしょうか・・・深く考えないことにします。


司会も下手です。※(へたじゃないです。。)
tv_show
なぜかと言いますと、司会は主催者の一部として出演しています。主催者の意見の代弁者なんです。

なので、舞台の配置的には下手の一番端にいます。コメントでも、「本日はイベントにご参加いただきありがとうございます。」と言いますよね?これは主催者の気持ちを代弁したコメントです。


パネルディスカッションのコーディネーターも同じ考え方です。
panel_discussion
パネルディスカッションという場においてはコーディネーター(モデレーターという場合もあります)は司会役であり、ある意味小さな主催者です。自分の顔のもとにいろいろな立場のパネリストが参加しています。ですので、パネルディスカッションの並びの中では一番下手側に位置します。


上手にはなにが来るべきか?

では「来賓」にあたる下手側からはなにが出てくるのでしょうか?これも箇条書きでまとめてみます。

・式典などの来賓挨拶の登壇者
・表彰式の受賞者
・受賞者の立ち位置を案内するアテンドスタッフ
・パネルディスカッションのパネリスト


さっきの逆なので分かりやすいですよね。ほとんどのケースはこの「上手=来賓、下手=主催」の原則に則っています。自分の経験などと照らし合わせてみて下さい。


イレギュラーケースの対処法

面倒なことにイレギュラーケースも多いです。つくづくイベントは90%のレギュラーケースと10%のイレギュラーケースでできているなと思います。
pose_atama_kakaeru_man
自分の経験でも司会が上手にいるとか、表彰式で上手にいる人から下手にいる人に贈呈するケースが実際にありました。その会社や組織の独自の風習、業界によるローカルルールもたくさん存在します。

ちなみに音楽業界には上手だからとか下手だからどっちという概念はありません。LIVEに主催も来賓もないですからね。
school_man
※位置関係を示すものとしては当然あります。だいたい音のバランスでギターとベースとキーボードの配置が決まります。


イレギュラーケースの場合、一部の出席者や登壇者から「ん?」とか「非常識だな」とか思われている可能性はありますが、それ相応の理由があれば今はそこまで気にしない人が多いと思います。イベントには時間の関係や便宜上など多種多様な事情が存在します。

進行に影響が出てしまうぐらいであれば、潔く無視しても構わないと思います。「上手=来賓、下手=主催」はあくまで原則論ですので、柔軟な考え方を持ちましょう。どちらでもいいという場合の限りに則って配置しましょう。個人的には伝統を重んじたい気持ちも強いのですが、これも時代の流れ。
今後は上手下手になにが来るべきという概念自体が無駄なこだわりになるかもしれませんね。。