イベント業に従事していなくても舞台監督、って言葉聞いたことありますよね。イベント業の方ならもちろん分かりますよね。この画像のようなお仕事ではありません。これは映画監督。工事現場の現場監督ともちょっと違います。舞台監督がどんな仕事かはっきりと答えられる方ってどれぐらいいるのでしょうか?数人の舞台監督さんに「舞台監督ってどんな仕事?」と聞いてみても、「よくわからない」とおっしゃられました。。

今回はそんな謎多き職業「舞台監督」のお仕事をご紹介したいと思います。 
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舞台監督ってどんな職業? 

君は今日から舞台監督だ!と認定してくれるような組織や団体はありません。職制でもありません。検定や資格もありません。業務内容的に舞台監督的なことをやっているから舞台監督。乱暴ですが、自称でなれる職業なのかもしれませんね。カメラマンとかプロデューサーと一緒です。そもそも舞台監督を略して、「舞監」(ぶかん)と読むか(ぶたかん)と読むかですら曖昧。※自分は(ぶたかん)と呼ぶ人には出会ったことがないのですが。。

俺に任せとけ!って自身を持って言えるようになったり、舞台監督業でご飯を食べていけるようになったら自称していい肩書かもしれませんね。正直ぼんやりしたイベント業界の職業の中でもさらに分かりにくい職業です。
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個人的なお付き合いの範囲ですが、会社所属よりフリーランスの方が多い気がします。数多くはないのですが、いくつか舞台監督会社(演出会社や進行会社と呼ぶかもしれません)という会社もありますが、どこも小規模で大手と呼べるような会社はない気がします。 


どんな舞台の監督しているか

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舞台と言ってもかなり幅が広くいろいろな舞台を監督されています。広いと行っても舞台の間口という意味ではなく領域という意味ですよ。舞台の話だけに表現が実にややこしい。。

LIVEやコンサート、お芝居やミュージカル、クラシックコンサート、開会式のような式典やセレモニー、セミナー、表彰式、お祭り、ダンスなどのパフォーマンス、パーティーやレセプション、ファッションショー、記者発表、展示会の特設ステージなどがあります。
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舞台監督にも得意不得意があり、これはできるけどこれはやったことがないとかが結構あります。舞台だから何でもかんでもできるという訳ではありません。それぞれのジャンルごとに非常に特殊なノウハウがあります。なので複数ジャンルをこなせる引き出しの多い舞台監督さんはスーパー舞台監督ですね。上からの物言いで非常に恐縮ですが、その方はすごく優秀な方だと思います。

ただ相性の良いジャンルはありまして、セレモニーとレセプションはセットで開催されることが多いので両方出来る方は多いです。ですが、同じセレモニーでも開会式はできるけど、テープカットセレモニーは苦手とか、鏡開きはやったことないとか、一括りにできない難しさはあります。
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やはり全く違うジャンルはやったこともないという場合が多いです。LIVEコンサートをメインでやられている舞台監督さんに記者発表の舞台監督をお願いするのは難しいことが多いでしょうね。

ただ逆のパターンもあります。セレモニーの時にクラシックや合唱といったパフォーマンスが行われることも多いので、意外とそういうのは得意という場合もあります。

制作業の視点から見てですが、その方の得意領域が不明確なので正直舞台監督さんにお仕事をお願いするのはかなり難しいです。お付き合いの深い方に仕事が集中するのはそういった事情があります。


舞台監督の出没スポット

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ちょっとアド街っぽい表現で失礼な表現ですみません。メインの出没スポットはそのままズバリ「舞台」です。 舞台に生きる人たちと言いたいところですが、あくまでメインの活動場所で、それ以外の場所に出没することももちろんあります。制作(発注管理)などを請け負っている場合はデスクワークや打合せ場所にも出向きます。またツアーなどに帯同する場合、リハーサルにもお付き合いされることがありますので、スタジオなどのリハーサル場所にも出没します。



舞台監督って具体的にどんなお仕事してるの?

一番代表的な仕事を簡単に言いますと、 

舞台を安全に管理、進行する仕事 です。 
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抽象的で分かりづらくてすみません。舞台監督のお仕事の範囲は非常に広く明確に定められていません。また人によっての解釈もまちまちで誤解を生みやすいです。現場でも、舞台監督なんだからこれをやってくれないと困るとか、これって舞台監督がやることじゃないの?とか、微妙な摩擦を生むことがしばしば。年代や業務経験、環境によっても大きく異なります。検定も資格もないので仕方がないかもしれませんが。。ですので、すごく一般的に言うとこんな抽象的な言葉になってしまいます。

ここからさらにできるだけかみ砕いてご説明します。


舞台の安全を管理する 

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昔から言われている舞台監督の一番大きな仕事はこの安全管理です。舞台監督は会場側に安全を十分に考慮した仕込みスケジュール、仕込み図を作成して、会場や主催者にいかに安全にイベントの設営が行われるか説明します。 また現場中も安全にイベントが開催されるかを常に見守っています。


  • 舞台には危険なものがたくさん 
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舞台セットや照明吊り込みで行う高所作業、大型の舞台セット、刃物や尖ったものなどを使った工事、落下物、舞台からの落下、飛び出した釘や柱、仮設電源からの電気工事、火を使う、水を使う、電飾を使う、暗い環境で作業、動くセット(奈落・ターンテーブル・廻り舞台など)、ダンスなど激しい動き、特殊効果(キャノン砲やCO2などの発射物、紙吹雪など)、大型車での搬入、特殊車両(電源車・クレーン車)などなど、あげるときりがないほど舞台は危険なものであふれかえっています。こうやってリストアップすると舞台周りは本当に危険要素がいっぱいですね。 

舞台監督にはこれらの業務が安全に行われているかどうかを管理する義務があります。なんなら、事故が起きたらそれは舞台監督のせいとまで言われていました。責任重大です。
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でも最近ではちょっとニュアンスが違うかもしれません。昔であれば会場とのお付き合い、技術各社のコーディネートは舞台監督のお仕事のひとつでしたが、最近ではフリーランスの方が多く、最終的な責任の所在は発注者。つまり、イベントの制作を行う側にあります。手配の上では舞台監督も技術各社も並列となります。業務内容としては管理は行うものの、責任の所在は発注元の制作側、主催側にあります。 


  • 仕込み、リハーサルスケジュール作成 
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先程の安全管理を行う上で重要となってくるのがこの仕込みスケジュールの作成。無茶な計画を組んでしまうと、業務が慌ただしくなり無理をして事故につながってしまいます。音響や照明などそれぞれのパートはそれぞれの視点で工程管理をしているため、全体のバランスを見た仕込みスケジュールの作成は舞台監督さんのお仕事になることが多いです。

仕込みスケジュールの作成は技術各社の事情を完全に把握していないと順番や所要時間を計算することが難しい非常に高度な作業です。経験豊富な舞台監督が作る仕込みスケジュールはかなり精度が高いので非常に助かります。

また仕込みスケジュールに深く関連してくるのが搬入出計画。計画通りのスケジュールで設営を行うためには搬入口に出入りする車の管理も大きな仕事のひとつになります。搬入口のサイズや搬入導線を見て、車のつけ方や機材を出す順番などの交通整理を行います。 

ここで一つ難しいポイントがありまして、精度が高いのはあくまで舞台監督が把握している範囲の動きに関してです。ライブやコンサート、お芝居などのジャンルではそれで間違いないのですが、企業イベントやセレモニー系のイベントではそうはいきません。このようなイベントでは出演者の事情やクライアントの情報、事情を加味しないと作れない計画も多く、舞台監督さんだけでは完結しない作業となってしまいます。そのため、制作側でいろいろな事情をヒアリングした草案を作成し、舞台監督さんとともにより精度の高い計画を組んでいくといった工程が多くなります。

仕込み、リハーサルスケジュール作りのコツはまたいつかこのブログで別の機会にご紹介したいと思います。 


  • 仕込み図作成 
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スケジュールと合わせて作成する必要があるのが「仕込み図」です。どこになにを設置するか明確にした資料を作成します。音照映施工特効の全ての仕込み図をミックスした全体図ですね。正しいサイズ感で作成しなければいけないため、舞台監督はCAD(キャド)と呼ばれる製図ソフトを使える方がたくさんいます。余談ですが、このCADソフトがめちゃくちゃ高いので、最近は使われる方が減ってきたかもしれません。  
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ここでもポイントとなるのが安全管理です。客席を何m離すかやキャノン砲の角度、非常口の位置、電源の取り口などを明記した事故が起きないように留意した計画を作成します。また、計画は会場の規則や消防法にのっとって組まれます。そのため会場規則や消防法に詳しい舞台監督さんが多いです。 

これもクライアントのいるような企業イベントやセレモニーのイベントではちょっと勝手が違います。CADで作った仕込み図は精度は高いのですが、見た目が非常に簡素なため、舞台監督が作った図面をベースに、施工会社さんがイラストレーターなどでかっこいい感じにリライトした図面を作成したりします。段取りだけを考えたら舞台監督さんの作る図面でも十分なんですけどね。 
 

  • 設営中、リハーサル中、本番中、撤去中の安全管理  
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現場は計画通りに進むわけではありません。予想外のこと、計画の変更もたくさん起きます。そこで舞台監督は危険なことが起きないか常に監視をしています。 基本的には計画通りに作業が進んでいるかどうか、計画に矛盾がないか、作業中に危険なことが起きていないか、などの観点で現場を見守っています。

舞台監督さんはよく声を出していますね。現場でこんなセリフを聞いたらその方は舞台監督さんの可能性が高いです。
「そこ、天井気をつけて!壁にぶつけないでよ」
「そこに荷物置いたらこのあと椅子設置できないからどかして」
「頭気をつけて!バトンおろします」
「ここ養生ちゃんとしてよ」
「ここの固定ゆるくない?」
「そこまだ入っちゃだめだよ」
「そこのヘルメットしてないスタッフどこのスタッフ!」

このように声を出してくれている人がいるから安全に現場ができるんですね。いつもありがとうございます。舞台監督さんのいない現場はどこかフワフワしていている気がします。


  • 舞台監督は怖い人が多い!?
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昔は自分もそう思っていました。なにかやるとすぐ厳しい言葉で怒られていたので、その時のトラウマのようなものが今も脳裏に焼き付いています。

ですが、大人になりいろいろな経験をすると事故って結構身近なものなんだということに気づきます。そして舞台監督の仕事を理解すると、事故が起こるかもしれないことをちゃんと注意してくれてるんだ、ということが理解できるようになりました。厳しい言葉も当然ですね。カミナリオヤジのようですが、疎まれながらも安全を第一に考えてくれていたんですね。

安全を司る仕事というのは事故を未然に防いでいるわけですから活躍の様子が分かりづらくそんなお仕事だなと今では思います。最近ではヘルメット着用義務などの安全意識の向上、会場のインフラ性能向上、備品性能や工事技術の向上によりそこまでガーガー言わなくても大丈夫になり、それにつれ、厳しい言葉を投げかける舞台監督さんも少なくなったように感じます。嬉しいやら寂しいやらちょっと複雑な思いです。個人的にはああいう怒鳴り声を聞くと現場に来たなぁ~とアドレナリンが出るんですが。。



と、今回は安全管理面を中心に舞台監督のお仕事をご紹介させて頂きました。お仕事の重要さは伝わったでしょうか?

これだけでもかなり責任重大のお仕事なんですが、他にもまだまだやらなければいけないことがたくさんあります。舞台監督ってお仕事マジで大変です。

かなりの長編になりそうなので、一旦ここで区切りたいと思います。次回は「進行管理」「どうやったら舞台監督になれるの?」などのテーマについてご紹介したいと思います。

ということで、今回はこのへんで。