ライブコンサートイベントの業界構造ってよく分からないですよね。イベンター?レーベル?プレイガイド?誰がなにをやってるの?調べてもイマイチよく分からず自分も就活時期にはかなり苦労しました。

「誰か教えてー!」って言いたいぐらいですが、誰も教えてくれない。。教えてくれたとしてもぼんやりとしていてよく分からない。そんなお声に今回はお応えして、自分の分かる範囲でライブコンサート業界の業界構造についてご説明したいと思います。ライブコンサート業界で働きたい就職生は必見です!
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ライブコンサートイベントに関わっているたくさんの会社

大きなイベントとなると、たくさんの会社が一つのイベントに関わっています。それぞれの会社が自分たちの得意分野を持ち寄って一つのイベントをつくっています。

ざっくりとリストアップしますと、

  • イベンター
  • プロモーター
  • 運営会社
  • プレイガイド
  • 事務所
  • レーベル
  • ショップ
  • 会場
  • メディア、広告代理店
  • テクニカル(音響照明映像特効施工等)

などなど。大きなイベントのクレジット(関係者一覧)を見ますと、だいたいこれらの会社がラインナップしています。ざっくりの分類でもこれですからね。細かく分類していくと正直キリがないです。似たような機能の会社もあれば、別の会社がいつもと違う機能を担ったりする場合もあります。イベント業界複雑ですね。。

ではさっそく一つづつご説明したいと思います!


イベンター

もしかしたら一般的にイベント会社というとこのイベンターと呼ばれる会社の仕事が一番当てはまるかもしれませんね。自分も「何の仕事をしているの?」と聞かれたらイベント会社と答えるのですが、だいたい「どんなイベントをやってるの?コンサートとか?」って聞かれます。

イベンターは主に国内アーティストのライブコンサートイベントの制作を行なっている会社です。イベントの制作とは会場、音響、照明、映像、特効、舞台、電飾、事務所、チケット販売会社、レコード会社、運営、警備、飲食、ケータリング、会場設営のハブになってイベントをコーディネートすること。現場の運営は運営会社に委託していることが多いと思います。

イベンターも得意分野ごとにもたくさんの会社が存在します。大規模の会場を得意としている会社、小規模の会場を得意としている会社、特定の会場を得意としている会社、パンクメタル系が得意な会社、クラシックが得意な会社、特定の地方に強い会社など大小様々です。特にお付き合いの深い会場は小屋付きのように会場のスケジュールをたくさん押えている場合があります。会場が空いていない場合、イベンターさんに相談するといいかもしりませんね。

イベンターは自社主催のリスク興行イベントをたくさん行っています。ちなみに自社主催のリスク興行イベントをクレジット上「企画制作」と表現することもあります。自主興行を行うかどうかが非エンタメ系のイベント制作会社との違いですね。動員状況によっては赤字になることもあります。請負は予算が確保されているので赤字になることはありません。

矛盾するようですが、イベンターはリスクを取らない請負業務も行なっています。ごく稀に企業スポンサーイベントも行いますが、あまり得意ではない気がします。ちなみにそこは企業イベント系のイベント制作会社の主戦場です。ちなみに自分はコンサート、ライブ系のお仕事も関わりますが、チケッティングや自主(リスク)興行を頻繁に行っていませんので、自分のことはイベンターとはあまり名乗りません。

代表的な会社はディスクガレージさん、キョードーさん、ホットスタッフさん、ALCさんなど


コンサートプロモーター

海外アーティストの招聘、コンサートコーディネート、海外アーティストの国内活動時の滞在時のコーディネートなどを主に行なっているイベント会社。イベンターとの分かりやすい違いは国内がメインか、海外がメインかが大きなところですが、それも明確な定義は多分ありません。プロモーターも国内アーティストも取り扱いますが、海外アーティストの取扱が多い気がします。その逆でイベンターが海外アーティストを取り扱うこともあると思います。人材の差で言いますと、海外アーティストの事務所と交渉をすることが多いので、英語や契約関係に詳しいスタッフが多いのが特徴です。

またイベンター同様ですが、企画制作、つまり自社主催イベントを数多く開催しています。というより請負制作をあまり行っていないという印象でしょうか。これもイベンターとの大きな違いです。そのためあまり良い表現とは思いませんが、「呼び屋」とも言われたりすることもあります。定義な曖昧な分、使う側もイベンターとの使い分けができておらず、どっちの意味でも使われることがあります。ただ自身ではこだわりを持って使い分けている方もいますので、使用する時は注意が必要です。

代表的な会社はウドーさん、スマッシュさん、クリエイティブマンさん、LIVE NATIONさんなど



運営会社

コンサートの実運営にあたる業務を中心に行なっている会社です。ライブコンサートイベントにおける運営とは具体的にはチケットもぎり、物販、会場誘導、警備、ケータリング、会場設営など。

人材派遣的な機をもっており、上記の業務を得意としているディレクターやアルバイトスタッフを手配しています。週末ともなればいたるところで大規模なイベントが行われていますので、人材力はかなりのものです。彼らがいないとイベントは成り立ちません。運営会社には独立系、会場系、イベンター系などがありますが、機能としては大きく差はありません。

得意分野はライブコンサート系ですが、企業イベントなどのホスピタリティーを求めるようなイベントにはあまり向いていないように感じます。運営会社では基本リスク興行の主催は行なっていません。ほぼプロモーターやイベンターからの発注で請負業務のみだと思います。運営会社に分類はしませんが、警備会社さんも近い機能を持っていると思います。

代表的な会社はケンスタさん、シミズオクトさん、ライブパワーさん、ワントゥワンさんなど



プレイガイド

イベントのチケットの販売を行なっている会社です。ちなみにチケット販売業務のことをチケッティングなどと言ったりしています。またチケット会社やアルファベットで「PG」などとも言われたりします。全国区のイベントを行う場合はその販売網の利便性や宣伝力の恩恵は計り知れません。最近では手数料の安い電子チケットも取り扱っているようです。

特徴としてはライブコンサートイベント以外もたくさん取り扱っています。そのためいろんなイベント興行という視点で一番フラットに見ている立場ではないかと思います。言い方を変えると、売れるか売れないかめっちゃシビアなビジネスマーケティング感覚をもっているポジションだなと思います。プレイガイドさんのイベントを見る目は確かですね。

代表的な会社はぴあさん、イープラスさん、ローソンチケットさん、CNプレイガイドさんなど



アーティスト所属事務所

個人的にはここもイベント屋に含めてもいいのではないかと思っています。実際にエイベックス・ライヴ・クリエイティヴさんなど事務所系のイベント会社もたくさんありますからね。その事務所に所属しているアーティストのイベントを行なっています。

興行は基本請負ではやらず、事務所主催としてリスクを背負って行います。イベンターへの発注元になることが多いです。よく言われることかもしれませんが、イベントをやりたいのであればイベント会社ではなく主催している会社に行った方がいいというのは本当かもしれません。他社に委託するまでもないようなちょっとしたイベントであれば自社内で行ってしまうことがあるぐらいノウハウをもっているので、イベント屋としてすごく優秀だな~と感じることもあります。

代表的な会社はアミューズさん、オフィスオーガスタさん、エイベックスさん、アソビシステムさんなど



レコード会社(レーベル)

先程の所属事務所と似ているのですが、ライブイベントを開催する際、また自社所属のアーティストが稼働する際にそのアーティスト周りの楽曲権利調整やそのアーティストのプロモーション、楽曲のパッケージ(CDなど)販売でイベントに深く関わってきます。

主催を行うこともまれにありますが、基本的には支援サポートということが多そうです。自社ではイベント制作をあまり行っている印象はありませんが、プロモーションイベントを行う際は中心的な立場で動きます。

代表的な会社はソニーミュージックさん、キングレコードさん、ユニバーサルミュージックさんなど



CDショップ

ライブコンサートイベントを開催するとほぼ必ずと行ってもいいほど会場でCD販売を行なっています。あまり知られていませんが、事務所やレコード会社でもCD自体はプロモーション用のサンプルしか置いておらず販売する際にこのような会社さんに手配してもらっています。

イベントで販売する際はCDのみならず、販売スタッフ、レジ、釣り銭、POPなどもCDショップが持ち込みます。イベントでよく見る握手会や撮影会などの特典会はCD売り上げをあげたいレコード会社とショップが手を組んで、事務所にスケジュール調整をしてもらい、イベンターに段取りを組んでもらいながら実施しているという仕組みです。

またライブイベントとは規模感が違いますが、CDショップではCD売り上げ向上のためCDを出したばかりのアーティスト行うミニライブ、通称インストアライブを毎週末のように開催しています。ですので、小規模のライブであればCDショップの方もイベントに詳しい方、制作ができる方がたくさんいます。主催というより受け入れ、請負というスタイルですね。

代表的な会社はタワーレコードさん、TSUTAYAさん、HMVさんなど



イベント会場(ライブハウス・ホール・会館・アリーナ・スタジアム)

これもただ会場を貸しているだけではありません。ライブコンサートイベントを構成する上では欠かせないノウハウをたくさんもっています。「ここで物販をやる場合は、並び列をこの様にするとたくさん並べます」といったように、イベントは地の利を活かした運営をすることが非常に多いです。また最近はオリンピックの影響から空前の会場不足状態。週末のみならず平日もたくさんのイベントが開催されているので、ノウハウはものすごい量蓄積されていると思います。

実はあまり知られていませんが、イベント会場もイベントを主催する自主興行を行っています。会場費がかからない(ランニングコストはかかりますが)といったメリットを活かして、請負でスケジュールが埋まっていない時に自主催事を行ったりもします。地方の会館などではアーティストを誘致して、自主興行を開催しています。やはりイベントは会場ありきですからね。会場費を抑えてイベントが打てるというのは絶大な強みですね。ホテルでのディナーショーもこれに近い形です。

もう一つあまり知られていない機能では、ライブハウスのスタッフさんはお酒を販売するノウハウに非常に長けています。ライブにはお酒はつきもので、だいたいのライブハウスにはバーカウンターが設置されています。そのため、イベントやフェスでドリンクを売りたい!となった場合、ライブハウスさんに相談すると非常に手慣れた運営を行ってくれます。先程ご紹介した運営会社さんではお酒の販売に慣れているスタッフはあまり所属していません。



メディア、広告代理店

よくクレジットに名前が入っているの見みませんか?あれってどういうことをやっていんのだろ?って思ったことありませんか?ライブコンサートイベントについているメディアというのは、TV局やラジオ局がやはり多いですね。またごくまれにですが広告代理店さんも名前を連ねていたりします。

機能としては2つあります。

一つ目は宣伝。これは分かりやすいですね。自社の媒体を使ってイベントを宣伝しています。よくテレビを深夜つけっぱなしにしていると、コンサートのCM流れていたりしませんか?まさにあれです。テレビやラジオには事業枠という枠があり、高額で取引されているTVCM(スポット)とは違う形で宣伝ができるんです。といっても、建前としては「自社関連の事業の宣伝」のための枠です。外部の方においそれと使わせるわけにはいきません。そこで、2つ目に関連する仕掛けがあります。

二つ目は主催(出資)。イベントのクレジットをよく見ると「なぜここが主催?」ってのが結構ありますよね。これは名義主催という状態です。名義だけではなく実質の主催の場合ももちろんありますが、名義主催というパターンは結構多いはずです。そうすることで、自社興行イベントとなり、事業枠で安く宣伝ができるようになります。誰が考えたか知りませんが賢い戦略です。

ではメディアにメリットがないじゃないかといいますと、そうではなく、人気のイベントとなると主催としてちゃんと出資を行ったりします。メディアが株主の様になり、イベントを開催した際の売り上げから配当を得るという構造です。これを実行委員会形式といいます。アニメや映画でも見る構造ですね。人気のあるコンテンツを選び、出資を行う、実費のかからない自社の媒体で宣伝してさらに売り上げを上げる、上がった売り上げから配当をもらう。まさに鉄板のビジネスモデル。

ということで、大きなイベントともなると動くお金が大きくなり、リスクも増える、たくさんの人に伝える必要が出てくる、といった事情を考えると、メディアはイベントビジネスにとって非常に重要な役割を担っていると言えます。



テクニカル(音響照明映像特効舞台 等)

縁の下の力持ちのテクニカルの皆さんをざっくりまとめてしまい申し訳ないのですが、役割が明白なのであまり詳しく説明することもないですよね。主な発注系統としてはイベンターから各社さんに連絡が入り、イベントに適した会社でチームを編成します。

ライブコンサートイベント独特の動きもあります。アーティストによっては強いこだわりがあり、このチームでないとやだ!ということも多々あります。そんな時は年間スケジュールをまとめ、ツアースタッフとして編成、長期のスケジュールを一緒に回ったりします。そのため、テクニカルの会社にはツアー対応系と単発イベント対応系の2種類のスタッフがいます。優秀なスタッフさんはスケジュールが早めに埋まっていくのはそのためですね。



ということで、画像もないので文章だけでライブコンサート業界についてつづってみましたがいかがでしたでしょうか?企業イベントを主体にされている方はイベント会社であってもこのような構造を知らなかったという方も多いのではないでしょうか。

ライブコンサート業界に入りたいと思っている就活生の皆さんは、自分がどのような形でイベントと関わっていきたいか、どの会社が自分の希望にフィットした会社か選ぶ際に参考にして頂ければ幸いです。

それでは今回はこのへんで。