ちょいと固めの話題に挑戦してみたいと思います。イベントに関連する法律というのは案外多いです。コンプライアンス意識が高まる現代では最低限の法律知識やその考え方を知っておく必要があります。

イベントの制作をやっているとちょくちょく出てくる消防法、消防申請。ちょっと難易度が高そうでとっつきづらいのですが、今回は消防法について自分の知る範囲の知識と経験則でできるだけ分かりやすくまとめてみたいと思います。
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イベントにおける消防法の考え方

消防法の考え方自体は法律家の先生方にお任せするとして、イベントにおいては大きく3つの考え方のポイントがあります。
  1. 火災予防
  2. 対処設備準備
  3. 避難手段確保
今回はその考え方に沿って紹介したいと思います。


1.イベントで火災予防をするには

この記事では受け入れる会場側の立場ではなく、イベントを主催する側の立場で記事をまとめてみたいと思います。まずは火災の恐れのある危険物を持ち込まないということが重要となります。では火災の恐れのある危険物とはなんのことでしょう?

  • 可燃物
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火災があった際に火災が拡大しないことが予防策の大前提となります。イベントに持ち込むものは全て防炎加工をしたものを使用して下さい。特に大型の資材(ブースなどの構造物の躯体や大型のバナーなど)は防炎加工は必須ですね。


  • 燃料物
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一番危険なのは燃料、つまりガスやガソリンです。イベントでは燃料を使用することが多々あります。飲食イベントを行う際の発電機用のガソリン、調理器具用のプロパンガス、電源車用のガソリンなど。これらを意味もなく持ち込むことはないと思いますが、消防申請を行う際にこれらが適切に扱われているか確認を受けることが多くなります。どんな用途で、どれぐらいの量で、使用機材は、保管方法はなどです。

またたまに使用するのがオイルベースのスモークマシンを使用する場合。これも消防申請の対象となりますのでスモークマシンを持ち込む際は注意が必要です。

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ストレートに危険物です笑 コンサートの演出で見たことがあると思いますが、ファイヤーボール、またはフレイムボールなどと呼ばれている特殊効果。使用する場合にはいろいろとルールが存在します。使用する何m以内に可燃物を置かない、客席から何m離すなど。これは会場さんが詳しいので使用したい場合は会場さんによく相談の上、消防申請を行いましょう。


2.災害対処設備をスタンバイ

所轄の消防とお話する際、いざ、火災が発生した際にちゃんと既存の設備が機能するか確認を受けるケースが多いです。会場の消防施設の代表的なものが
 ・消火器
 ・スプリンクラー
 ・煙感知器
 ・非常灯
です。
では、それぞれについて掘り下げて考えてみましょう。
  • 消火器
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イベント会場にはあらかじめ定められた場所に消火器が設置されています。その確認は会場さんに任せるとして、イベントによってはこちらで追加の消火器を持ち込む必要があります。それが先程も紹介しました火災の恐れのある危険物の近くです。

発電機合体型の投光機の近くに消火器を用意することが義務付けられている場合もあります。また各ブースごとに1本や○○m置きに1本置いて欲しいなど会場によってマチマチです。所轄の消防さんの指示に合わせて用意しましょう。

  • スプリンクラー
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これは完全に施設常設のものなのでこちらで用意する必要はありません。少なくとも自分の経験上持ち込んだことはありません。ただ一つこちらで行わなければいけないことがあります。それがスプリンクラーの放水がちゃんとブース内に行き届く環境にするということです。

映像を見せるためブースに屋根をつけて暗い環境を作るというケースがあるのですが、その際に水が通らないとスプリンクラーの機能が半減してしまいます。なので、紗幕(透けている幕)などでちゃんと水が抜ける構造を確保して欲しいと指示を受ける場合があります。

  • 煙感知器
こちらは展示イベントだけでなく舞台やコンサートなどのステージイベントでもよく登場します。一番耳にするケースはスモークの使用時。煙感知器をOFFにしておかないと、スモークを使用した際に煙感知器が反応してしまい進行が止まってしまいます。会場さんにスモークの使用時間を伝え、感知器のOFFをお願いしましょう。忘れがちなのがリハーサル時。リハーサルの時もスモークを使用するのであればこれもちゃんと伝えましょう。

  • 非常灯
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イベント会場には必ず非常灯が設置されています。役割は当然災害時に避難ルートの案内なので、会場のセッティング時は隠してはならないというルールがあります。施工物や幕などで隠さないようにしましょう。

ですが、実はこれ隠してもOKな場合があります。それは仮設で非常灯を設置するという方法です。ルート自体が確保されている場合、その仮設の非常灯でルートを指し示すことができれば大丈夫なことがあります。だいじょうぶな場合とダメな場合がありますので会場さんに相談しましょう。

またこの非常灯、消すこともできるんです。舞台演出上、完全暗転をする際にどうしても気になるということであれば会場さんに相談してみましょう。案内のスタッフを立てればOKなどの条件はありますが、それをクリアできれば完全暗転ができる場合があります。



3.避難手段を確保

災害はいくら予防、対処をしても対応しきれない場合があります。そこで最後に重要になるのは避難手段の確保です。イベントでは仮設でいろいろなものを持ち込みますので、避難ルートに影響が出る場合があります。それを防ぐためイベント会場では様々な工夫がなされています。
 ・通路導線の確保
 ・座席数の最大数の決まり
このようなことがあります。

ではこれも一つづつ補足していきましょう。

  • 通路導線の確保
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会場にイスがあらかじめセッティングされている劇場型の会場ではなく、フラットないわゆる平土間型の会場でイスをセッティングする場合、その通路の設定が定められています。1列何名、何列で一つ通路を、通路幅、前後幅、壁から何m空ける、非常口前は何m空けるなどです。着席の座席を設定される場合は会場ごとにルールが異なりますので、図面を作成される前に会場さんに消防に通る設定を教えてもらいましょう。

またこれは客席に限りません。展示会などのブースを設置する際にも取り決めがあります。これも会場ごとや来場者の数によってことなりますので、会場さんに相談の上設定しましょう。

  • 座席数の最大数の決まり
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上の項目に近いのですが、会場には最大キャパが定められています。チケットを販売される場合はそのキャパを超えて立ち見スペースを売ったりはできません。消防に申請したキャパを守って会場を使用しましょう。



ということで、基本的な考え方をまとめてみましたが、難しかったですか?手間はかかりますが基本は会場さん、消防さんによく相談の上プランを決めましょう、ということです。今回の記事はその相談の回数や時間を少しでも削減できるようお役に立てればと思って書いてみました。

今度はこれを理解した上での消防申請の行い方についてまとめてみたいと思います。それではまた~